デジタル活用で中小企業・組合の可能性を広げる

神奈川県室内装飾事業(協)|スムーズで効率的な防火・防災ラベル申請で組合員・組合事務局の負担軽減を実現

内装工事業・インテリア商品販売業を営む事業者が集まり、防炎ラベル・防火壁装ラベルの需給・発給業務及び技能検定試験や技術講習会を行っている事業協同組合。組合員が防火内装の工事を行う際、防火や防炎の性能を示すラベル表示が義務付けられており、組合が事務局となりラベルの発給を行っています。ラベルの申請は所定の書類に手書きで行われ、組合員はもとより組合事務局にとっても大きな負担となっていたため、「kintone」とWebフォームの「じぶんフォーム」、帳票出力の「ドキュトーン」を導入しました。

【課題】組合員:事務所に戻って手書きで申請/組合事務局:手書き文字の判読と集計作業

 ラベル申請にあたり、組合員は申請書類の作成をする際には現場での仕事を終えてから事務所に戻って手書きで申請書類を作成していました。そのため、組合員の負担が大きく残業の要因になり、郵送作業なども含めると非常に手間がかかっていました。また、組合事務局でも数年かけて組合員に対するアンケート調査を実施しており、電子申請を望む声を多く収集していました。

 組合事務局では、防火壁装ラベルだけでも年間900件近くの発行申請を組合員から受けています。郵送で送られてくる手書きの申請書の文字を判読するため、発給ミスの防止や急ぎのラベル発給への対応が非常に困難です。また、申請書を紙で保管していることから関係各所からの照会についても検索が容易ではありません。毎月行う上部団体への発給枚数の報告も手集計でした。

【導入】「kintone」とWebフォームの「じぶんフォーム」、帳票出力の「ドキュトーン」を導入

 この状況を鑑みて、当組合の事務局担当である渡邊英和専務理事は神奈川県中央会(以下、中央会)に相談し、ラベル発給の電子化を進めることにしました。

 中央会に相談したところ、組合員が現場で即時申請ができること、そして、組合事務局が申請をリアルタイムで把握できることを条件とすると、クラウド型のWebデータベースである「kintone」、Webフォームである「じぶんフォーム」の導入がコスト面でも機能面でも最適ではないだろうか、という提案を受けました。

 なお、上部団体への報告には申請書の紙を添えなければならないことから、データから帳票出力を行う必要がありました。そのため、同じく中央会からの提案により帳票出力の「ドキュトーン」を導入しています。

【効果】組合員の約99%が使用! 業務効率・事務効率共にUP!

 導入当初は従来のやり方からの大きな変更となるため、年配の組合員からは不満の声も上がりました。しかし、申請フォーム周知・活用のために、渡邊氏自ら、紙での申請があった組合員を訪問してフォームでの申請の簡単さや操作方法を説明したり、隣で一緒に画面を見ながら紙で申請された内容を申請フォームで申請し直したりすることで、次回から電子申請を試してみるように促していき、電子申請の流れを作っていきました。

こういった丁寧なフォローアップの結果、導入からわずか1年ほどでシステムの使用率は99%にまでのぼっています。特に若い人には好評であり、使っていて面白い・楽になったなどの声も上がっています。

 もちろん、組合内部での事務効率も向上しました。紙での保管が不要になり、照会はデータを検索するだけで済みます。また、集計も自動的に行われます。

【経緯】中央会による支援と事業スケジュール

解決策の提案から助成金の申請書作成支援まで

 中央会は、渡邊専務理事からの相談を受け、ラベル発給申請の電子化に必要な支援を行ってきました。

中央会による支援内容
  • 組合の電子化要望についてヒアリング
  • 従来のラベル受発給フローについての課題整理
  • ベースとなるクラウドサービスの調査及び選定
  • 試用環境下でのシステム試作開発
  • 開発ベンダーの調査及び選定
  • 開発中の組合とベンダー側との意見調整
  • システム開発資金調達のための助成金の調査及びその申請支援

事業スケジュール

デジタル活用に興味がある
業務の問題を把握する

組合事務局で組合内部としてラベル受発給に関する事務の課題を認識し、同時に、組合員からも現場の声を収集

IT戦略をつくる
合意形成の下準備

組合内部アンケートで電子申請の意向を確認し、システムについてのイメージを固める

IT戦略をつくる
課題を整理

組合業務のみならず現場のこともよく知っている渡邊専務理事を中心として中央会がヒアリングを行い、現状のラベル受発給フローについて整理することで課題を整理・把握

デジタル活用に興味がある
情報収集

予算面で不安があったため中央会から厚生労働省の「雇用・労働働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)」の活用提案を受ける

ITの導入準備
ツールを選択

中央会から「kintone」とWebフォームの「じぶんフォーム」、帳票出力の「ドキュトーン」の組み合わせの提案を受ける

ITの導入準備
お試し利用

中央会にて試用(デモ)環境を用意し、システムを試作開発することで予めシステムのイメージを掴む

ITプロジェクト進行(開発・導入)
設計・開発

開発ベンダーとの打ち合わせには中央会職員も同席して組合と開発ベンダーとの間でのコミュニケーション(IT用語、組合事業の解説など)を支援

ITプロジェクト進行(開発・導入)
マニュアル準備

組合員が利用するために必要なマニュアルを事務局が作成し、チラシ作成するなど周知にも力を入れた

継続
利用者へのサポート

紙での申請があった組合員を事務局が訪問し、隣で一緒に画面を見ながら操作方法を説明、紙で申請された内容を申請フォームで申請し直すなどの丁寧なフォローアップを実施

神奈川県室内装飾事業協同組合

主な事業:申請業務の事務代行・共同宣伝・共同購買・福利厚生・教育情報事業等

所在地:神奈川県横浜市尾上町三丁目43番地

組合員数:204名(取材時)

事務局員数:2名

● 導入ITツール:kintone、じぶんフォーム、ドキュトーン 

● 導入・構築の費用:100万円~200万円(全額助成金で賄う)

● 活用助成金:雇用・労働働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)