デジタル活用で中小企業・組合の可能性を広げる

神奈川県牛乳事業(協)|学校給食用牛乳の受発注業務に関するクラウドシステムの構築

神奈川県牛乳事業協同組合(以下「当組合」)と発注者である学校との間で、FAX連絡等により行われている日々の学校給食用牛乳の受発注業務について、クラウドを利用した統一ネットワークシステムを構築しました。

【課題】膨大なFAX事務処理と転記作業

 当組合員と各学校の学校給食用牛乳受発注の事務運用は、FAXが普及してから数十年改善されておらず各社の労務費・通信費・紙代等を圧迫していました。

 FAXと電話のやり取りは、データ入力・確認及び受注書類のファイリング作業が必要となり業務の負担となっています。あわせて、FAXでのやり取りは不具合による行き違いや、文字の誤記等による入力ミスが発生し受発注ミスにつながっていました。

 また、学校の休校や生徒の欠席等により牛乳の受発注数は頻繁に変更となりますが、受発注の変更作業も通常の受発注業務と同様にFAXと電話で対応を行っており、再度データ入力とデータチェックが必要となり業務の負担となっていました。ここ数年はコロナ禍での休校や学級閉鎖などでの変更が増加していて、さらに煩雑化していました。

【導入】Webベースのシステムを導入/ポイントは各組合員の実情に合わせた機能選択が可能なシステムであること

 当該システムでは、各組合員の実情に合わせて使用する機能を組合員が選ぶことができるという点が普及のポイントになりました。

 ある組合員は本システム構築以前に自社開発でFAXの受注内容を転記することで製造指示書から配送、請求業務までを一気通貫して行うことのできるシステムを開発していましたが、別の組合員はPCへの転記は行うもののシステム化をしていない、という背景がありました。

 そのため、自社でシステムを開発済みの組合員はシステム化の恩恵を十分に得ることができません。そのため、各組合員の実情に合わせ、システムの中で使う機能と使わない機能を組合員が選択できるようにしました。

 システムの運用にあたっては、公益財団法人神奈川県学校給食会「以下学校給食会」に協力を依頼し操作説明会を開催しました。

 学校給食会は先行して給食の受発注をシステム化していた神奈川県パン協同組合連合会の事例があったため、比較的スムーズに協力を得ることができました。

【効果】毎日6時間かかっていた作業が30分に! 業務効率・事務効率共にUP!

 2024年度より、組合傘下の学校給食事業は100%の市町村で当該システムを利用することになります。

 全ての機能を導入した組合員の事務作業は、従来、毎日90枚のFAX処理に6時間かかっていたものが30分に短縮されました。また、受注機能のみを導入した組合員のFAX枚数はシステム導入から半年で月平均62枚から9.7枚にまで減少し、業務効率は飛躍的に向上しています。

 更に、目に見えない効果として、受注担当者におけるミスに対するプレッシャーが軽減されました。これまで、受注に関してはFAXの文字からの転記作業などにミスがあった場合、製造指示書や配送表にまで広範囲に影響を及ぼすことから、受注担当者は常にプレッシャーにさらされていました。現在は、例えば休日なのに発注がある、などの目に見えた異常値が発注ミスとして取り扱われており、その頻度は非常に少ないものとなっており、システムの軽微な改修で解消できるものがほとんどでした。

 また、組合事務局においても上部団体への報告の集計にかかっていた時間が大幅に短縮されることになりました。

 顧客である学校や給食センターにおいては、前述の神奈川県パン協同組合連合会の先行事例があったため、FAXからの移行は非常にスムーズに行われました。また、発注状況が可視化できることについては、日々の業務が多忙な教職員に対しても発注ミスの軽減に役立っています。

【中央会による支援】助成金の申請書作成支援まで

解決策の提案から助成金の申請書作成支援まで

 中央会では、組合からの依頼により本システムの構築に必要な支援を行ってきました。

中央会による支援内容
  • 組合の電子化要望についてヒアリング
  • システム開発資金調達のための助成金の調査及びその申請・報告支援
  • システム開発会議等への出席

事業スケジュール

デジタル活用に興味がある・情報収集
先行事例の研究

神奈川県パン協同組合連合会より学校給食受注システムの内容についてヒアリングをする

IT戦略をつくる
組合内部での調整

学乳部会(学校給食共同受注に関する委員会)にて、各組合員の実情やシステム化した際の負担などについて検討・調整

IT戦略をつくる
ベンダーとの打ち合わせ

学乳部会のメンバーでもある組合員企業の従業員とベンダーとの間で仕様等の決定

ITの導入準備
補助金申請

令和4年度中小企業組合等課題対応支援事業への応募(令和3年度中小企業組合等ビジョン計画策定事業の活用)

ITプロジェクト進行(開発・導入)
設計・開発

ベンダーによるシステムの設計・開発

ITプロジェクト進行(開発・導入)
マニュアル準備

ベンダーによるマニュアルの作成

継続
利用者へのサポート

学校給食会と連携して説明会を開催し、利用者のサポートを行う

導入のポイント

・組合員各社の実情に合わせることのできる柔軟なシステム開発

・普及率UPにつなげるための他団体との連携と先行事例の存在

・助成金を活用した導入

神奈川県牛乳事業協同組合

主な事業:学校給食用牛乳の共同受注・学校給食用牛乳の原料乳及び副資材の共同購買・共同購買・福利厚生・教育情報事業等

所在地:神奈川県横浜市磯子区西町14番3号

組合員数:6社

事務局員数:2名

● 導入ITツール:Webベースシステム 

● 導入・構築の費用:800万円~900万円

● 活用助成金:令和4年度中小企業組合等課題対応支援事業、令和3年度中小企業組合等ビジョン計画策定事業