マッチング事例

バイタルセンサー ~技術と信頼が生み出した製造委受託の地域連携~

株式会社リキッド・デザイン・システムズと横浜電子株式会社は、IoTを推進する活動の中で出会い、ベビーセンサー『Baby Ai(ベビーアイ)』の開発で連携しています。横浜電子が製品の心臓部ともいえるバイタルセンサーの製造を担うに至った決め手は、技術力の高さと、両社長の信頼関係でした。確かな職人技により、性能のばらつきが少ないセンサーの製造を実現。見学会や親睦会を通じて築かれた確かな信頼関係と、お二人の誠実な人柄が営業秘密の壁を崩しました。

■ マッチング内容

リキッド・デザイン・システムズが初めて手掛けた自社製品『Baby Ai』の製造で連携しています。『Baby Ai』は赤ちゃんの睡眠中の呼吸や心拍を見守るツールマット一体型ベビーセンサーで、これまでの海外製品の性能を上回る、初めての国産製品です。横浜電子は、その中で最も重要な部品であるバイタルセンサーの製造を一手に引き受けています。

■ きっかけ

インタビュアー:両社が出会ったきっかけについてお聞かせください。
【リキッド・デザイン・システムズ】
「横浜電子の神田社長とは、両社が加盟している『横浜IoT協同組合』の前身、『横浜IoT協議会』をきっかけに3年ほど前に知り合いました。協同組合が正式に設立されたのは1年ほど前ですが、ものづくり補助金フォローアップ事務局が構想段階からIoTに興味を持つ企業を集めて協議会を作り、打ち合わせや親睦会の機会をアレンジしてくれました。その中で、神田社長と出会い、親交を深めました。」

■ 経緯と決め手

インタビュアー:マッチングに至った経緯をお聞かせください。
【リキッド・デザイン・システムズ】
「当社は、独自技術のバイタルセンサーを利用して各種の応用技術特許を取得、見守りセンサーなど様々な製品を開発、展開しています。バイタルセンサーとは、生体の微弱な振動から生ずる空気の圧変動を電気信号に換える素子です。『Baby Ai』は当社が初めて手掛けた自社製品です。寝ている赤ちゃんの呼吸や心拍をリアルタイムで計測し、低呼吸になった時にアラート音を鳴らしてお知らせしたり、専用アプリで遠隔でも睡眠見守りや呼吸状態の記録ができます。
マッチングの決め手は、横浜電子の高い技術力と、神田社長との信頼関係です。
バイタルセンサーは、以前は県外の企業に製造をお願いしていたのですが遠方であったため、できれば横浜周辺の企業にお願いしたいと思っていました。横浜電子に試作開発をお願いしたところ、とにかく精度がよい。センサーは精度が命ですが、現状では手作業が一部残ります。それでも製品ばらつきが小さい。高い技術力をお持ちである証拠だと思いました。また、製品の心臓部であるバイタルセンサーの中身は、一切仕様を開示せず営業秘密としています。よほどの信頼関係がないと製造はお願いできません。様々な機会を通じて“人となり”をよく知ることができ、信頼できる方だなと思えたのが本当に大きかったと思います。」
【横浜電子】
「当社は制御系技術を事業の一つの柱としており、顧客企業の要望に応じて様々な製品をカスタマイズ対応し製造しています。その実績がまずはベースとなっていると思います。

IoT推進協議会では、それぞれの事業を知ることがまずは大切と考え、見学会を開きました。連携イメージは徐々に湧いて来ましたが、実際の打診を頂いたのは協同組合になってからでした。マッチングのためには時間をかけて互いを知ることがポイントとなりますが、正式に協同組合となったことで、更に信頼感が高まったのが決め手だったと思います。」

■ 創意工夫した点

インタビュアー:創意工夫した点はどんなところでしょうか?
【横浜電子】
「オンリーワンの部品なので様々な創意工夫が必要だった、と思われるかもしれませんが、実は開発上、それほど斬新なことはしていません。それより、よくこういう仕組みを遠山社長は考案されたな、という思いの方が強いです。製造上は、はんだ付けと組み立て工程に気を遣っています。微妙な状態変化を検知するセンサーなので、はんだの量や熱のかけ方で仕上がりにばらつきが出てしまい、動作が安定しません。組み立てる際の工具にも工夫をしました。丁寧な手作業が必要で、その点は今でも苦労している点ですね。」

■ 今後の展開と課題

インタビュアー:今後に向けた課題などはありますか?
【リキッド・デザイン・システムズ】
「最大の課題はコストダウンです。バイタルセンサーは製品の心臓部であり、ロットを引き上げていくのと同時に、細かいコストダウンの工夫を重ねていく必要があります。」
【横浜電子】
「販路が拡大したら機械化を進めていくことになると思いますが、微妙な手作業を代替するため、製造機械には高い精密度が要求されます。開発に時間とコストがかかりそうですが、一旦機械化できれば、品質はさらに安定すると思います。また、医療系に展開する場合、医薬品医療機器等法(薬機法)上の許可を得ることが課題となるかもしれません。」

インタビュアー:最後に、今後の展開についてお聞かせください。
【リキッド・デザイン・システムズ】
「当社の今後の事業領域は、ベビー、介護・病院、睡眠、美容の4つだと考えています。介護・病院向けには、介護向けに離床や徘徊の頻度・長さを感知したり、おむつ交換時期がわかるような製品を開発中です。一般病院向けでは、日本光電と『身体非接触のIoTベッドセンサーの共同開発』で合意しました。睡眠の領域でも、睡眠の質を決定づける『深(真)睡眠』の時間帯や頻度、長さを間接的に把握する開発が進んでいます。美容での販路拡大を含め、大型の案件もありますので、実現すればセンサーの製造ロットも大幅に増やすことができると考えています。」
【横浜電子】
「センサーの増産につながる案件受託に期待しています。機械化が実現すれば、制御系技術という当社の強みをさらに強化することができると考えています。」

■ 会社から読者へのコメント

【リキッド・デザイン・システムズ】
「『Baby Ai』は当社初の自社製品であり、筐体(プラスチックケース)の設計・製造に大変苦労しました。筐体は現在、県外の企業に製造を委託していますが、コミュニケーションが難しいため、横浜周辺でお願いできる企業を探しています。また、パッケージ製造や出荷手配もあまり効率的な状態ではありません。今後、大型案件が受注できる可能性がありますので、協力頂けるお話があれば是非、伺いたいです。」
【横浜電子】
「当社は、制御系を中心とした機器、応用装置や電子ユニット、基盤などについて、設計開発から製造検査まで一貫して対応が可能です。制御する対象も、光や色、風量、ものの動きなど様々です。業種も問わず、食品から産業機械まで、小さな基盤から大型の車両や機械装置まで扱っています。工場としての価値を高めていきたいと思いますので、ファブレスの装置メーカーと連携できる機会をもっと持ちたいと思います。」

 各社の情報
株式会社リキッド・デザイン・システムズ

採択年度:平成25,26,28年度 / 情報サービス業
神奈川県横浜市港北区新横浜2-3-4 クレシェンドビル
http://liquiddesign.co.jp/

平成20年6月に創業。独自技術のバイタルセンサーを利用したモジュールで特許を保有し、共振美顔器や各種見守りセンサーなどのハードウェア・ソフトウェア製品開発を行っている。また、自社技術・製品のODM/OEM販売、製品のIoT化サービス、iOSアプリの開発/受託サービスも手掛けている。

横浜電子株式会社(よこはまでんし)

採択年度:平成27年度 / 電気機械器具製造業
神奈川県横浜市保土ケ谷区仏向町937−2
http://www.y-denshi.com/

昭和45年1月に創業。FA・制御・計測機器、電子応用機器やプリント基板、IoTや各種システムの開発・設計・製作・検査及び販売を行っている。各種研究所向けに熱伝導率測定装置を納入し、官庁からの受託製造も手掛けている。近年は、車両突破防止装置をシステムからポールまで自社開発し、セキュリティ分野も強化している。

 

関連記事

  1. 完熟いちごの和紅茶 ~紅茶・いちご・含蜜糖(がんみつとう)のマリ…
  2. アカモク入り丸ごといわしのつみれ ~厳選した原材料と生産者の技で…
  3. 「横浜IoT協同組合」の設立 ~ものづくり補助金採択事業者による…
PAGE TOP