高梨茶園と株式会社竹内商店は、ものづくり補助金フォローアップ事務局の紹介で出会い、『完熟いちごの和紅茶』を発売しました。本物にこだわり、素材そのものの持つ味や風味を第一に考えて商品化しています。色や形といったパッケージやネーミングにも気を配ることで、商品価値を引き上げて地域をアピールできるお土産として仕上がりました。新たな市場を開拓するという前向きな姿勢が両社の共通点であり、代表者どうしの相性が良いこともマッチングの決め手となったと感じます。
■ マッチング内容
高梨茶園が手掛ける和紅茶をベースに、完熟いちごのドライ果肉と竹内商店のリーフ型砂糖をセットした『完熟いちごの和紅茶』を発売しました。紅茶に適した茶葉に、秦野市特産の完熟いちごをドライにして加え、甘すぎない上品な風味と香りの含蜜糖(がんみつとう)を竹内商店がセレクション。味のマリアージュを実現しました。小物入れにも使える赤いマット地のかわいい缶に入れ、砂糖もなんと葉っぱの形。お土産に最適な一品に仕上がっています。これからのいちごの季節に増産を進め、ECサイトでも拡販していく計画です。
■ きっかけ
インタビュアー:両社が出会ったきっかけについてお聞かせください。
【高梨茶園】
「いちごと和紅茶を組み合わせた新商品を開発する中で、味やデザイン、パッケージに課題を感じ、ものづくり補助金フォローアップ事務局に相談したところ、竹内商店の紹介を受けたのがきっかけです。」
【竹内商店】
「事務局の方から打診を受けたのですが、生産段階からポリシーを持って真摯に事業に向き合う姿勢に共感しました。当社の考え方にマッチした出会いでした。」
■ 経緯と決め手
インタビュアー:マッチングに至った経緯をお聞かせください。
【高梨茶園】
「伝統的な飲み物であるお茶をより幅広い年齢層の方に好んで頂きたいという思いから作り始めた紅茶ですが、ある時ふと、秦野にはいちごが多いことに気づき、ドライにしたいちごを混ぜたら面白いのではないかと考えたのです。
いちごは値段も高く、摘み取り時期にも気を遣います。カットやドライ加工には手間もコストもかかりますが、思いに賛同して頂けた農協青年部仲間のいちご農家と加工品を手掛ける野菜農家の協力を得ることができました。残った課題の一つとして、どうしても酸味が残り素朴な味になってしまうことがありました。竹内商店はサトウキビの素材そのものの風味や味を大切にして砂糖づくりを手掛けており、いちごの和紅茶と合わせることでこの課題を解決できるのではないかと考えました。」
【竹内商店】
「当社の砂糖は味や風味に個性があるので、飲み物とのセットも、双方の特性を踏まえて相性を考えることが大切です。積極的に提案を行い、また茶葉をイメージするリーフ型もあったことがポイントになったのではないかと思います。」
インタビュアー:素材の持つ味や風味、色合いを大切にし、形やデザイン、パッケージで商品価値を上げ、新たな市場を開拓するという、信念と前向きな姿勢が両社の共通点です。代表者どうしの相性が良いこともマッチングの決め手となったと感じます。
■ 創意工夫した点
インタビュアー:創意工夫した点はどんなところでしょうか?
【竹内商店】
「今回採用頂いたリーフ型砂糖は、実は10年前に開発を始めたのですが、前例がなく手探り状態でした。精製しない粘り気のある含蜜糖(がんみつとう)を型に入れ、乾燥させて抜くのですが、上手く抜けない。手作業で工夫を重ね、コツをつかむのに長い時間がかかりました。大量生産に対応するための機械化も、落雁(らくがん)用の機械に独自の開発・改良を加えることで昨年ようやく製品レベルのものが出せるようになったのです。今回のお話はタイミングもよかったと思います。
味の点では、様々な組み合わせを試した結果、程よく蜜分を含んだコクと優雅な風味が特徴の『MS-03』という含蜜糖(がんみつとう)が合いそうだと感じ、高梨茶園にも試飲してもらって商品化に至りました。いちごの酸味を活かす絶妙なマリアージュの上に、今回の商品は成り立っているのです。」
【高梨茶園】
「いちごの実はそれぞれ別の品種で、茶葉に混ざっているのは『よつぼし』、浮かべるスライス状のものは『おいCベリー』とです。このこだわりも織り込みリーフレットで触れました。秦野のいちごのPRにも役立ちたいと思うからです。また、葉っぱの形の砂糖がセットされることで、お土産としての商品価値はかなり上がったと思います。」
■ 今後の展開と課題
インタビュアー:今後に向けた課題などはありますか?
【高梨茶園】
「課題は量産化です。初期分の完熟いちごは使い切ってしまい、現在欠品中なので、これからのいちごの季節に増産を進めていく計画です。今は秦野市の名産センター他3店舗と、工場のある自社での直販しか扱っていませんが、今の3倍くらいの量産ができるよう加工体制を強化し、もっと手軽に購入頂けるようECサイトも構築中です。」
インタビュアー:最後に、今後の展開についてお聞かせください。
【高梨茶園】
「『完熟いちごの和紅茶』をご購入されるお客様は30代以上の女性が多いと思っていましたが、幅広い年齢層、特に男性にも受けたのは意外でした。お土産としての目新しさも評価頂き、日本茶では得られない新しい顧客層を開拓できたと思います。ケーキやクッキー、パンともよい組み合わせとして、洋菓子店やパン屋とも提携の話があります。また、リピーター向けには缶でなく、量が入るチャック袋の商品も出したいと思います。いちご以外の素材を使った紅茶のお話を頂くこともありますが、秦野という地域にこだわり、秦野をPRできる商品づくりをこれからも目指していきたいと思います。」
【竹内商店】
「今回のコラボレーションを具体的な新しい取り組み事例として販路開拓の提案ができる点が大きいと思っています。砂糖を加えることで味に奥行きが出たと感じており、砂糖の使い方のバリエーションが増えました。」
インタビュアー:「仕事はご縁だ」と両社の代表者が口を揃えて仰っていたのが非常に印象的でした。常にアンテナを立て、頂いた案件には真摯に対応すること、ビジョンを持ち、試行錯誤しつつ自分の商品に自信を持つことが大事とのことです。魅力的なお二人のお話を伺い、人と商品のイメージが一致して初めて、強いメッセージが生まれるのだと思いました。
■ 会社から読者へのコメント
【高梨茶園】
「量産化に向け加工体制を強化したいです。また、神奈川、秦野をアピールできる商品作りをしていきます。チャレンジは大好きなので、一緒に取り組めるご提案をお待ちしています。」
【竹内商店】
「砂糖に形を与えるアイデアは当社独自のものです。商品価値を上げるコラボレーションのアイデアがあれば是非検討したいです。」
各社の情報
採択年度:平成29年度 / 飲食料品小売業
神奈川県秦野市菩提1387
http://www.takanashi-chaen.com/
昭和28年に創業、67年の歴史を持つ秦野市の老舗茶園。恵まれた雨量と秦野の気候風土のもと、品質にこだわった9品種の丹沢遠山茶を自社で一貫して栽培・製茶・販売している。『味よし・人よし・気分よし』を理念に、丁寧な作業で高品質な商品をお客様と地域のために提供し続けたいと考えている。また、四代目の新鮮なチャレンジ精神で、新たなお客様にも喜んで頂ける革新的な製品作りに取り組んでいる。
採択年度:平成29年度 / 食料品製造業
東京都中央区日本橋小網町13-2 オーチュー小網町ビル4階(本社)
神奈川県小田原市東町3-6-5(小田原ファクトリー)
https://marukichi-sugar.com/
昭和29年に創業、66年間、良質な砂糖を提供し続けてきた砂糖問屋。特に、さとうきび本来の風味やコクを大切に残した、そのまま食べてもおいしい甘すぎない砂糖は、料理やお菓子、コーヒー、紅茶など素材にあわせて使い分けが楽しめる。一般消費者向けに、独自の技術で砂糖に『形』を与え、原材料本来の色合いや、パッケージなどにもこだわったデザインシュガーを開発、新たな販路を次々と切り拓いている。