株式会社 TAC21と有限会社 山上蒲鉾店は、中央会主催の地域産品展をきっかけに出会い、「アカモク入り丸ごといわしのつみれ」を共同開発しました。化学合成成分に頼らない「本物」の良さ、原材料と生産者の技の調和、そして何よりも、地域の発展につながり手軽に食べてもらえる商品作りをしたいという共通の思いが決め手となりました。今後とも、神奈川県という地域のつながりを大切にして、業種を超えた仲間づくりを進めていきたいと両社は願っています。
■ マッチング内容
TAC21のアカモク(栄養価の高い海藻の一種)と山上蒲鉾店のいわしのつみれを合わせた「アカモク入り丸ごといわしのつみれ」を共同開発しています。栄養成分としてもいわしで足りない部分をアカモクで補っていて、とても相性が良い商品です。製造は山上蒲鉾店で行い、販売は重要商品として、TAC21が本腰を入れて行っていきます。試作品は完成していて、現在は成分解析を実施して栄養価を見える化する一方、商品の良さが伝わるパッケージの開発を進めています。
■ きっかけ
インタビュアー:両社が出会ったきっかけについてお聞かせください。
【TAC21】
「中央会主催の地域産品展に参加したことがきっかけです。特に、食品関連企業6社それぞれの食材を使った料理を作ってみる企画が事前にセットで用意されていたことがポイントでした。交流を深め、互いの製品の良さを理解する機会があったことで、山上蒲鉾店に声をかけさせて頂きました。」
【山上蒲鉾店】
「TAC21はいろいろな商品を扱っていらっしゃいますが、コンセプトがはっきりしています。アカモクは当社にとってもしっくりくる食材で、声をかけて頂いてよい機会ができました。」
■ 経緯と決め手
インタビュアー:マッチングに至った経緯をお聞かせください。
【TAC21】
「以前から逗子の産品を活用した食品づくりを考えてきました。ただ、地域の産品として有名なシラスは人気があり過ぎ、タコは供給にバラツキがあるなど難しかったのです。5年ほど前に商工会会報にアカモク料理の公募があり、興味を持って調べたところ、北大の宮下教授の研究で、アカモクには血糖値を正常化させ、内臓脂肪を燃焼させる『フコキサンチン』が多いこと。また免疫を高める『フコイダン』もモズクより多く、カリウムなどミネラルも豊富で、旨味成分もあるため、塩の代わりに減塩に良いなど『海藻の王様』であることが分かりました。弊社はアカモクを2日間自社の庭で天日干しし、保存性を高めております。地域産品展でお会いした小田原の老舗・山上蒲鉾店は製品開発力も高く、地魚はじめ、現代人に不足しているα‐リノレン酸が豊富な真イワシ団子等も製造されており、大変魅力的でした。
それにアカモクを加えれば栄養的にも最強の製品になり、今回ご縁ができて何よりです。」
【山上蒲鉾店】
「私たちにも、美と健康のためにも、もっと魚を食べてもらいたいという思いがずっとありました。魚は肉に比べて価格がやや高く、鮮度に敏感で調理にも手間がかかるため、美味しくて体に良いものを簡単に手軽に食べられる商品にして広めていきたいと考えていました。今回のつみれであれば、時間がない場合には、インスタントみそ汁に1粒入れるだけで、栄養価を大きく上げることができます。」
インタビュアー:化学合成成分に頼らない「本物」の良さ、厳選した原材料と誇り高き生産者の技の調和、そして地域の発展につながり手軽に食べてもらえる商品作りをしたいという共通の思いが、今回のマッチングの決め手となりました。
■ 創意工夫した点
インタビュアー:創意工夫した点はありましたか?
【山上蒲鉾店】
「今回の開発における最大の課題は、アカモクの分量によって食感が変わってしまうことでした。最適な配合を見つけるのに苦労しましたが、結局、全体の5%程度がよいと判断し、さらにゴマを加えて風味と栄養価を一層高めることにも成功しました。つみれとアカモクの持つ高い栄養価により、「完全食」と両社が自負する商品に作り上げることができたと思っています。」
■ 今後の展開と課題
インタビュアー:今後に向けた課題などはありますか?
【TAC21】
「これまで生の食材はほとんど扱ってこなかったため、運搬や貯蔵、売り方を含めた新しい販路開拓や販促方法が必要となります。現在、これまでの販売チャネルへの打診を含めて、いろいろな可能性を探っているところです。」
インタビュアー:最後に、今後の展開についてお聞かせください。
【TAC21】
「商品化は最終段階にあり、完成と同時に従来の販売店はじめ、新規販路開拓に向け、営業に力を入れていく必要があります。同時に分析データに基づいた栄養面での訴求や、各種情報発信に努めたいと思います。アカモクはこの3月もNHK『今日の料理』に、またananではダイエット素材として『キングオブ海藻』として取り上げられており、今回、そのアカモクを超える現代人に最強の栄養食品として発信していきたいと思っております。同時にイワシは酸化しやすい素材でもあり、品質の保持、栄養面、素材のよさなど、パッケージやメッセージも合わせて商品化に向けて、取り組んでいきたいと思います。」
【山上蒲鉾店】
「健康志向のアカモクファンが固定客として考えられますが、同時に、つみれは手軽で一般の方にも美味しく食べて頂ける食材です。定番の鍋やおでん、みそ汁だけでなく、生で食べてもおいしいし、特にトマトとの相性がよく、つぶしてパスタなどの洋風料理にも使えます。食べ方を具体的にイメージしてもらうため、様々な調理方法も紹介できるような仕組みも用意したいと考えています。」
インタビュアー:両社は今後とも、逗子、小田原に限定せず、神奈川県という地域のつながりを大切にして、業種を超えた仲間づくりを進めていきたいと願っています。そのためにも、今回の展示会のように、新しいつながりを求めてイベントに参加するなど、自ら動いてみることが非常に大事ではないかとのお話を、ものづくり補助金に取り組む各社へのメッセージとして頂きました。
■ 会社から読者へのコメント
【TAC21】
「逗子という地域を元気にしていきたいです。食材に限らず、一緒にアイデアを考えて頂ける会社がいらっしゃればと思います。」
【山上蒲鉾店】
「頭と内臓を取り除いただけでミンチにして作る当店のつみれは非常に栄養価が高いです。ブームではなく定番品として、つみれに新しいアイデアを頂ける方、また、もっと魚を食べて頂くことに協力頂ける会社は大歓迎です。」
各社の情報
採択年度:平成27年度、平成30年度 / 飲食料品卸売業
神奈川県逗子市小坪3丁目19番2号
http://www.tac21naturalfood.co.jp/
1970年に世田谷区で創業、健康を考える方、おいしいものを追求する方、地球環境を大切にしたい方へ、原材料から製法までこだわり抜いた商品開発、選りすぐりの商品を販売してきた。現在は本社を神奈川県逗子市に移し、地域の発展がひいては食文化の活性化と環境への配慮につながるとの確信のもと、地元で収穫した素材を使った商品開発に力を入れている。
採択年度:平成26年度 / 食料品製造業
神奈川県小田原市浜町3-15-2
https://yamajoukamaboko.co.jp/
明治11年(1878年)に創業、今年で142年、江戸期からは320年とも言われる歴史を持つ小田原蒲鉾の老舗。伝統的な蒲鉾の製造技法にこだわり、魚の仕入れから製造に至る全工程を自社で行っている。これまで、全国蒲鉾品評会 「農林水産大臣賞」を通算5回受賞、2015年には水産練り製品製造で全国3人目、小田原で初の、厚生労働省「ものづくりマイスター」に認定された。