デジタル活用で中小企業・組合の可能性を広げる

逗子ポイントカード事業(協)|ポイントカードのデジタル化でこれからも地域のお客さまに愛されるポイントカードに

逗子市内の中小企業・小規模事業者を加盟店としたポイントカード事業を行っている事業協同組合。端末の老朽化や、昨今のデジタル化の流れをきっかけに、磁気式からORコード・クラウドを活用した県内組合として初となる、ポイントカードシステムへ切り替えました。

【課題】①新たなポイントカードシステムへの切り替え刷新②加盟店や顧客に負担をかけない移行の実現

 組合では平成16年4月より磁気式カードのポイントカード事業を行ってきました。この磁気式のポイントカードは「しおかぜカード」の名称で、逗子市内で広く利用されてきましたが、端末の老朽化が進み、新たなポイントカードシステムへの切り替え刷新が課題でした。

 また、デジタル化が進む昨今で旧来の磁気式ポイントカードの仕組みを継続すべきかどうか悩んでいたところ、地元自治体の逗子市が地域振興のため発行するプレミアム商品券をデジタル化し、電子商品券を発行することなりました。ちょうど同じ時期に、電子商品券の発行に際して、市長から当組合理事長にも相談があり、いよいよ当組合を取り巻く環境にも本格的なデジタル化の到来を実感しました。そこで、ポイントカードの仕組みを刷新する財源の目途をつけ、新たなデジタルポイントカードシステムの導入の決意を固めました。

 当組合のポイントカード事業のデジタル化ができれば、今後行われる様々なデジタル振興策の受け皿となる展望も描きながら、ポイントカードシステムの刷新へと取り組みを始めました。

【導入】県内初となるQRコードを活用した新たなデジタルポイントカードの仕組みを構築

 ポイントカードシステムのデジタル化に際しては、ポイントカード事業の立ち上げから付き合いのある会社に依頼し、県内初となるQRコードを活用した組合のデジタルポイントカードの仕組みを構築することにしました。ベンダーは当組合のポイントカード事業をよく理解していることから、新システムの導入はスムーズに進みました。

 並行して進めた加盟店との合意形成へは入念に準備して取り組みました。過去に磁気カードシステムの改修を行った際には、慣れない操作によって加盟店や消費者に混乱が生じてしまい、クレームが発生した苦い経験もあったからです。

 今回の刷新では、加盟店や消費者に負担なく、スムーズにシステムを切り替えることを第一に考えました。具体的な取り組みとしては、移行前から組合員を対象に勉強会を開催・情報の共有を図り、予め新しいシステムに慣れてもらうことで不安の払しょくに努めました。また、消費者の対応窓口は事務局が担いました。補助事業の活用により、新システム移行後も従来の会費設定を維持できる目途もたちました。このように、役員・事務局が一体となって、できることを全てやり切ったうえでシステムの刷新に取り組むことで、加盟店との合意を形成することができました。

【効果】スムーズな移行を達成!デジタル化による地域振興の受け皿のひとつに

 2023年4月よりQRコードを利用した新たなポイントカードシステムをスタートさせました。事前の入念な取り組みが功を奏し、現在に至るまでトラブルは発生しておらず、目標としていたスムーズな移行を達成することができました。またデジタル化によりポイントカード精算事業の効率化が図られることも期待されます。

 同年5月には逗子市がしおかぜカードのポイントを活用した実証実験を開始したことで、連携事業が始まりました。これは逗子市が主催する海岸清掃などの市民向けイベントの参加者に対して、当組合のポイントに交換可能な行政のポイント券が貰える取り組みです。デジタル化による地域振興の受け皿となるという目標が、一つ実現したと言えます。

【展望】デジタルポイントカードを通じて、地域振興を波及していきたい

 逗子市は創業者も比較的多く、若い事業者も多い地域です。デジタル親和性が高いと思われるそうした事業者たちにも、新しい仲間として加盟店に加わってもらいたいと考えています。

 また、今後はデジタル化による基盤を生かして、地域のためのポイント事業という軸足は保ちつつ、10年以上にわたり逗子市の地域通貨事業と連携してきたノウハウを活かしながら、他団体も交えた地域振興を模索できないか、さらなる取り組みへの可能性を探っているところです。逗子市との連携事業のように、当組合のポイント事業を受け皿としたデジタルの仕組みを活かした販売促進、決済の起点となるような取り組みを検討していきたいです。

【経緯】中央会による支援と事業スケジュール

 中央会は、菊池事務長からの相談を受け、デジタルポイントカードシステムの構築及び新システムへの円滑な移行に向けて、随時情報共有を図りながら支援を行ってきました。

中央会による支援内容
  • ポイントカードシステムの切り替えに伴う活用可能な補助金・助成金の相談を受ける
  • ポイント端末機及び管理用ソフト一式の導入に役立つ補助金の提案・申請支援
  • 組合員への新システムの周知・理解の促進(専門家派遣による伴走支援)
  • 新たなポイントカードシステムの運用体制の構築(専門家派遣による伴走支援)

事業スケジュール

IT戦略をつくる
合意形成の下準備

社会としてはデジタル化の流れは止められないとの認識のもと、デジタル化を進める方針を組合として掲げ、組合内で理解を得ていく

デジタル活用に興味がある
情報収集・相談

ポイントカードのデジタル化に伴う費用負担を考慮し、補助金情報など日々アンテナを張るなかで、中央会に相談

IT戦略をつくる
デジタル化に取組む決意を固める

条件に合う補助金の提案を中央会から受け、デジタル化に取組む大きな後押しに

IT戦略をつくる
運用体制の検討

補助金の申請と並行して、中央会の専門家派遣事業を利用して運用体制や組合員への周知策を検討

ITの導入準備
組合員への導入周知、ヒアリング

夏頃に全体説明会を開催し、臨時総会であらためてデジタルポイントカード導入の承認を得る

ITプロジェクト進行(開発・導入)
設計・開発

理事会にベンダーも参加し、中央会も適宜指導して新システム導入に伴う規約やマニュアルの整備、新システム移行の研修を支援するなど、組合とのコミュニケーションを重ねる

継続
利用者へのサポート

ここまでの入念な事前準備やスタート1か月前の試用期間を経たことが奏功し、組合によるフォローのみでスムーズな運用を実現

逗子ポイントカード事業協同組合

主な事業:ポイントカード発行事業、共同宣伝・販売促進事業、教育情報事業、福利厚生事業

所在地:神奈川県逗子市沼間一丁目5番1号

組合員数:75名(取材時)

● 導入ITツール:デジタル式ポイントカードシステム 

● 導入・構築の費用:1000万円~1200万円

● 活用補助金:神奈川県協同組合等共同施設補助金(物価高騰等対策)

● 活用施策:組織連携強化現地指導事業